手術が必要な病気やけがを負った赤ちゃんや幼い子どもを治療するのが、「小児外科」という医療分野。現在、カンボジア国内で、小児外科を扱うことができる病院はとても少ないのです。正しく診断し、適切に治療できる医師や看護師が不足しているためです。回復できるはずの患者への対応ができていないために、幼い子どもたちが命を落としたり、生涯にわたるハンディキャップを負ったりするという状況につながっています。
子どもの死亡率が東南アジアで最も高い国のひとつとなっているカンボジア。1970年から20年間あまりにわたる内戦、特に1975年~1979年のポルポト時代の圧政により、医療施設と医療従事者がほとんど失われてしまいました。1980年以降、諸外国の支援を受けて、医師、看護師の養成や医療施設の回復も徐々に進みましたが、専門性が高い小児外科に関しては国際的な支援がありませんでした。
そこで、FIDRはカンボジアに小児外科という医療分野を立ち上げる必要があると考え、1996年から首都プノンペン市の国立小児病院において、小児外科医療の技術の向上および診療体制の構築を、同病院との連携協力を得ながら進めてきました。20年に渡り努力を重ねた結果、カンボジア人の外科医や麻酔科医たちが国内での人材を担えるまでになりました。
2016年からは地方における小児外科診療体制を強化すべく、カンボジア北東部のクラチェ州をモデル地域に選定し、活動の中心を地方に広げました。適切な診療を受けられない子どもたちがまだ多く存在する同国の地方において、適切な外科診療ができるための人材育成と患者搬送システムの体制構築などの活動を展開していきます。
カンボジア北東部において子どもが適切な診断と外科治療を受けられるよう、クラチェ州病院を拠点とした小児外科医
療体制を整えます。
カンボジア・クラチェ州
2023年4月~2028年3月(予定)(総事業期間:1996年10月~2028年3月)
小児外科という医療分野が確立されていなかったカンボジアにおいて、外科医、麻酔科医、看護師の育成と医療施設の改善を段階的に進め、この国の小児外科学の実践と教育における中心をつくり上げ、ここから全国への波及を目指しています。