FIDR(ファイダー)は、開発途上国の子どもたちの支援と緊急援助を行う、国際協力NGOです。

ベトナム少数民族地域活性化のための観光開発

文化と自然に調和した観光で村おこし
2020年10月28日

一石五鳥をねらえ!…いや一石十鳥だ!〜プロジェクトが生み出したもの〜(その3)

カトゥー族の人々


これまでの経験が未来へ繋がる

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大がはじまってからの約9か月、ナムザン郡の少数民族の人々は、人の移動が大きく制限される中でどのように自分たちの商品やサービスを提供できるかを考え、新たなアクションを始めました。
「カトゥー族ツアー」を実施し観光客を迎え入れていた村では、農作物の出荷を開始しました。試行していたカトゥー族の伝統料理の紹介イベントを元にしたデリバリーサービスや、オンライン版カトゥー族ツアーのアイデア等も生まれ、実現に向けた準備が着々と進んでいます。オンラインツアーは11月にいよいよ販売開始される予定です(詳しくはウェブサイト、SNS等でご案内します)。2トンの豆の出荷を成し遂げた成功体験で得た自信が次のアイデアに繋がり、カトゥー族の人々は状況の変化に臨機応変に対応しています。


特産品の紹介イベントを開催 ダナン市でカトゥー族料理やプロジェクトで開発された特産品の紹介イベントを開催

料理 こんな料理がデリバリーされる日が来るかも?


少数民族の社会参画は健全な経済成長には欠かせないながらも容易ではなく、ベトナム政府の重要な課題です。当プロジェクトは、見事にその参画を促し、ナムザン郡の住民の収入向上だけではなく、文字通り地域活性化につなげることができました。クァンナム省人民委員会レ・チ・タン委員長(日本の県知事にあたります)は、このプロジェクトで構築されたモデルを「ナムザン・モデル」と名付け、対象地を9郡に広げた新プロジェクトをFIDRに要請しました。

ナムザン郡の豊かな自然、地域資源を活かした商品に価値があること、そして需要があること。それらを提供する喜びと、創作の楽しみは、誰しもが享受できるものです。私たちFIDRの次なる挑戦は、クァンナム省内に、山岳国境地域からのユニークな商品やサービスが流通するしくみをつくり、これまでつながるチャンスがなかった人々が市場経済に参画する機会をもたらす基盤を確立することです。

「このプロジェクトには、多くの参加者、関係者がいました。できる限り多くの人々の声を聞き、みんながいつでも笑顔で参加できるように地域・人々・自然の調和を大切にしながらプロジェクトを進めました」(アシスタント・プロジェクトマネージャー ホア職員)

「人々には皆、誇れるものがあり、それを共に喜べる、誰でも参加できる、そんな環境や仕組みをつくりあげるお手伝いができたことに、心から感謝するばかりです」(ベトナム事務所 大槻所長)

 人々から、もっと注文受けられるよ!もっとできるよ!という、「もっとやりたい」、「もっとできる」という言葉が多くなりました。地域が、人々がまさに活性化している、そんな時に、無事プロジェクトを完了することができました。ナムザン郡のこの勢いは、次のプロジェクトで他郡にも伝播し、さらに多くの人が参画できる場づくりに繋がることを期待しています。

2020年10月20日

一石五鳥をねらえ!…いや一石十鳥だ!〜プロジェクトが生み出したもの(その2)〜

コロナ禍で市場とつながった見事な連携プレー

2020年春。4年間のプロジェクトの完了まであと数か月という時期に、プロジェクト地にも、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響が及びました。しかし、コロナ禍で明らかになったのは、プロジェクトに参加してきた少数民族の人々が連携する力と、非常時にも機能する物流の仕組みが育っていたことでした。

毎年春は、少数民族カトゥー族の生活文化や豊富な自然を体験できる日帰り観光ツアー「カトゥー族ツアー」に、学生のスタディーツアーや観光客からの申し込みが多く寄せられます。ところが今年は、新型コロナウイルスの影響で、予約が軒並みキャンセルとなりました。カトゥー族ツアーの収入は、同ツアーの運営とナムザン郡全土から集まる特産品の受注を担うナムザン郡協同組合の収入の多くを占めていました。仕方のないこととはいえ、組合の収入が大幅に減少し、それが人々の収入減少にもつながる懸念は拭えませんでした。

3月下旬から事実上のロックダウンに入り、在宅で仕事をしているFIDRベトナム事務所スタッフのもとに、ナムザン郡協同組合から一本の電話が入りました。 「えええ??? 2トンの豆のオーダー?!」

コロナ禍で、食料を備蓄しようとする買いだめの動きはベトナムでも見られました。プロジェクトを通じて卸を始めたダナン市内の農作物販売店が、市内だけではなくハノイ店やホーチミン内数店の注文も集めてくれ、これまでにないほどの量の発注となったのです。

この発注を受けた後、FIDRのスタッフ、ナムザン郡の協同組合や地域を繋ぐ役割をしているコミュニティ・コネクターたちも、一気にスイッチが入ったかのような動きを見せ、多くの村々に声をかけ始めていました。村の人々には、きちんと練習を繰り返してきた通りに異物を取り除き、マメを選別、磨くことを指示し、コネクターたちは、すでに移動制限が発令されており通常のミニバスが使えない中、(こっそりと)レンタカーを手配し、村々でマメを集荷してもらい、(うまく)ダナンに配送という交渉もしました。このような、見事な短時間内での超連携プレーの連続で、納期に無事に間に合わせるという妙技を発揮してくれたのです。FIDRスタッフ全員、「お見事!」という言葉しかでませんでした。

豆2トンの納品を可能にした、山岳地の「ローカル・サプライチェーン」

成功のカギとなったのは、ナムザン郡協同組合とコミュニティ・コネクターの連携の強さと、このプロジェクトで培ってきたナムザン郡の奥地、ラオス国境の村から縦横無尽に蜘蛛の巣のように張り巡らされた、見えないローカル・サプライチェーンの仕組みです。今回のような農作物だけではなく、伝統織物をはじめ、林産物、かご製品、観光受入等々、ナムザン郡が誇る多くの素材を市場と結びつけるために、プロジェクト開始当時から練習して、研修して、50kg、100kg, 300kg…と対応できる量と人数を増やしてきました。その成果がプロジェクト最終年度に発揮できたのです。

豆はこのような形態で、店舗等で販売されます

プロジェクトを統括してきた、ベトナム事務所の大槻所長はこう語ります。 「一連の嬉しいハプニングで、15年以上にわたるナムザン郡での活動を卒業する時がきたなと強く感じました。数年前までは、『時代遅れ』や『不器用な人々』と呼ばれてきた人々が、強みを前面に出し、つながることによってこんなにも力を発揮できることを学ぶことができました。そして、一石二鳥ではなく五鳥、いえ、十鳥が狙えると確信しました。」

これ以外にも、農産物の注文は相次ぎました。結果、2020年は半年で、前年の総売上額を超えていたのです。

2020年10月8日

一石五鳥をねらえ!…いや一石十鳥だ!〜プロジェクトが生み出したもの(その1)〜

2016年から中部山岳地のナムザン郡で、地域資源を活用した特産品づくりによる少数民族の収入向上と地域の活性化を目指してきた当プロジェクトは2020年8月に4年間の活動を完了しました。
FIDRのプロジェクト・メンバーはたった数人。その呼びかけで、約4,900世帯が動き、230を超える商品が開発されました。一体、地域で何が起こったのでしょうか。これまでの取り組みを振り返ります。

キーワードは「自分の宝から、お客様の宝へ」

プロジェクトの根幹となったのは、誰もが参画できること、そして地域資源を商品化し、マッチするマーケットで販売するという仕組みです。

当プロジェクトでは、先行プロジェクトで開発された「カトゥー族ツアー」や「伝統織製品」のほか、特産品化できそうな地域資源を見つける「宝さがし」を行い、豆やお米等の農産品、スパイス、籠など様々な「宝」が商品になりました。

これら「宝」の発見から開発までの過程には、住民誰もが参加できます。FIDRが着目したのは、彼らの持っているクリエイティビティです。2017年に実施した日本人専門家によるワークショップで、たった3色の粘土菓子を使って作品をつくるという課題が出された際に、彼らは豊かな発想力で創造性に溢れるたくさんの作品を生み出し、専門家を驚かせたのです。住民のクリエイティビティを引き出すよう努めたことで、多様な「宝」の産出につながりました。そして、「宝」の商品化には、対象地域の90%を超える4,900世帯が携わりました。

住民が発掘した宝はABCDEの5つのレベルに分類され、それぞれの商品が挑戦しやすいマーケットにすぐに挑めるよう工夫しました。4年の間、住民は、「発掘した資源(=宝)が商品になったあとも、マーケットからのフィードバックを受け、常により良いものをつくる」というサイクルを無数に繰り返しました。

地域資源を十分に活かした製品やサービスを「自分たちの宝から、お客様の宝へ」と意識することで、ファンを増やし、そしてファン・コミュニティが構築されていきました。

出来上がった織物商品の検品もしっかり行われた 出来上がった織物商品の検品もしっかり行われた

加工品を製造する村の人々。装備もばっちり! 加工品を製造する村の人々。装備もばっちり!

2020年6月25日

コロナ禍で、新たな可能性をみつけたおじいさんたち

ベトナム少数民族の織物手工芸マルシェ 自慢のペットボトルホルダーを見せてくれるおじいさんたち

世界各地で新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、ベトナムでは当初から厳格な対策を講じたため、これまでに確認された感染者数はわずか300人程度で、死者が一人も出ていません。こうしたことから、政府は4月下旬以降制限措置の緩和を進めてきました。 FIDRも、2月から約3か月にわたって一時停止させていた活動を、5月上旬から再開させました。

2016年から進めてきた当プロジェクトは、今年が最終年度となり、現在、プロジェクトの評価を現地の政府と住民とともに実施しています。評価では、プロジェクトによりどんな影響があったか等を住民から聞き取っていきますが、今回は、住民自主グループの一つであるニッティング(籠あみ)グループのおじいさんたちに伺った話を紹介します。

このグループは、今まで、カトゥー族の村を訪れる観光客にプレゼントする「ウェルカムセット」のペットボトルホルダー等を作ってきました。しかしこの数か月は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、観光ツアーがすべてキャンセルされました。観光客が来なくなり、収入が減っているだろうとFIDRスタッフは心配しましたが、おじいさんたちは笑って語ってくれました。

「実は最近、ペットボトルホルダーやいろんな種類のかごが、村内や近くの村々で売れるようになったんだよ。意外なところにマーケットがあるんだと気づいたよ」 「このプロジェクトを通じて、作った製品の売り方がわかるようになったんだ。研修や会合などに参加する中で、以前はあまり行かなかった近くの村々にもたくさんの知り合いができて、紹介されることも増えたよ。だから、近くの村々でも自分が作った製品が売れるようになって、そこの人たちとのコミュニケーションも増えて、すごく楽しい。時には、買ってくれた人には、歌も歌ってあげてるよ!サービスだな!あはは!観光客が来なくなっても、収入は少しずつだけどちゃんと入っているから大丈夫だよ」

これまでプロジェクトに参加してきた住民たちが、現在のような困難な状況の中でも、自分なりに製品開発やその販売に力を入れ、対応できたのは本当に大きな変化です。 今後も評価を通じて、プロジェクトが住民に及ぼした様々な変化を把握していきます。


2020年2月26日

ベトナム事務所の大槻所長へのインタビューが地元紙で
特集されました

新聞インタビュー記事 ベトナム中部クァンナム省の新聞インタビュー記事

ダナン市に事務所を開設した1998年以来、FIDRはクァンナム省ナムザン郡に暮らす山岳少数民族カトゥー族を長年支援してきました。これまでの支援により、カトゥー族の人々は、自分たちの力で主体的に地域を活性化するようになり、彼らの取り組みはベトナム中部に暮らすほかの少数民族の人たちにも影響を与えています。
このようなFIDRの活動は、近年、これまで以上にメディアで取り上げられることが多くなり、最近は持続可能な支援に対する意見を求められるようになってきています。

先日は、クァンナム新聞に「コミュニティを繋ぐ橋を築く」というタイトルで、ベトナム事務所の大槻所長のコメントが大きく掲載され、開発に関するFIDRの考えや提言を広く発信する機会となりました。
「クァンナム省山岳地にある有形・無形の伝統的価値のあるものについてどのように開発を進めるべきか」、また「持続可能な観光を山岳地で展開するにはどうしたらいいか」との質問に対し、大槻所長は以下のように答えました。
「住民と政府だけではなく、民間企業や専門家など、あらゆる分野の関係者が連携して取り組むことが大切。特に、行政や外部者が直面している課題であるが、山岳地に居住する、独自の文化や風習をもった少数民族とは、調和を保ちながら、彼らの速度に合ったアプローチで信頼関係とネットワークを構築する必要がある。さらに、世界遺産を2つも持つクァンナム省において、近年ホイアン市が世界中の注目を浴び、観光客が集中している。旅行会社は新しく珍しい商品を探しているが、クァンナム省にはそのポテンシャルが十分ある。クァンナム省内のどこにどんな文化を持った少数民族がいるのか、など観光地に関する情報を発信しているチャンネルがまだないため、各分野が連携をし、必要とされる情報をきちんと発信する体制を整えることが急務である」。


2020年2月25日

日本からの訪問団約1,000人にFIDRとカトゥー族の取り組みを紹介しました

カトゥー織製品の展示販売 ダナン市内のシンポジウム会場にてFIDRの活動紹介およびカトゥー織の実演とカトゥー織製品の展示販売を行いました

1月11日から14日の日程で、日越友好議員連盟会長を務める自民党の二階俊博幹事長と、日本の経済界や地方自治体の関係者など約1,000人がベトナム中部のダナン市とホイアン市を訪問しました。

訪問期間中に開催された観光や投資の促進に向けたシンポジウムでは、クァンナム省を代表する伝統文化として、FIDRが振興を支援してきた少数民族カトゥー族の織物「カトゥー織」が紹介され、カトゥー族の女性たちは、二階幹事長、フック首相臨席の下、カトゥー織の実演を行いました。FIDRはベトナムで活動をしているNGOの中で唯一シンポジウムへの招待を受け、カトゥー族の人々と一緒にカトゥー織や織物製品を展示販売しました。

「カトゥー織」は、日本の支援により失われつつあった少数民族の伝統文化が復活した好事例として紹介され、日本から訪れた関係者の高い関心を集めました。


自民党の二階幹事長 シンポジウム会場に向かう自民党の二階幹事長(中央)

カトゥー織と織物製品 カトゥー織と織物製品について説明するベトナム事務所の大槻所長(写真右から2人目)


2020年1月14日

中部少数民族が来日、スタディツアーを実施しました

ベトナム少数民族の織物手工芸マルシェ 30年以上オーナー制のみかん農園を経営している農家を訪問し、体験型農場について学ぶ参加者(福岡県糸島市)

11月28日から12月8日まで、プロジェクト関係者が福岡県、熊本県、大分県と大阪府を視察するスタディツアーを実施しました。プロジェクトの最終年度を迎えるにあたり、「一村一品運動」の商品開発、観光客を取り込む体験型農場、地域振興を後押しする行政の取り組みなど、地域資源を活かした特産品づくりや観光開発、地域振興の持続可能な仕組みづくりについて様々な事例を学びました。

彼らにとって最も印象深かったのは地域リーダーたちの姿でした。「アジアをリードする国・日本の山間地で、自分たちと同じように、こだわり抜いた地域資源を活用して特産品をつくり、住民を巻き込んで地域を盛り上げるリーダーたちの姿に心を打たれた」「少数民族にとって40代は引退の年齢で、40歳を過ぎた自分はそろそろ引き際だと思っていた。山を歩き回り頑張る70代〜80代の方々に出会い、自分たちももっとやらなければと思った」と関係者たち。最終日には「自分たちにもできる」という自信と決意を新たにし、アクションプランの策定に入りました。帰国後、地域を変える様々なアイデアを実行していくことが期待されます。


「一村一品運動」の歴史や商品開発について、ベトナムの事情と絡めて説明くださる、国際一村一品交流協会の内田理事長(大分市)

地域振興を後押しする行政の役割と住民参加のまちづくりの事例を学ぶ参加者(熊本県産山村)


2019年12月18日

ベトナムで少数民族の織物ネットワークが結成されました

ベトナムの伝統衣装 各民族の特色ある織物で作られた伝統衣装をまとう17グループの代表とFIDRベトナム事務所大槻所長(写真右)

10月11日、ベトナム中部および高原地域の織物ネットワーク設立ワークショップが開催されました。この背景には、FIDRがこれまで支援してきた「カトゥー織」の振興があります。

FIDRは、2008年から4年間かけてベトナム中部クァンナム省ナムザン郡のカトゥー族の女性たちを支援し、失われつつあった伝統織物技術の継承と、織物の商品化に努めました。2011年には、この女性たちが主体となり、クァンナム省として初めて、少数民族による織物協同組合が発足。彼女たちの村は「伝統手工芸村」として登録され、カトゥー織は2014年に国の無形文化財となりました。現在も、カトゥー織を活用した様々な商品を製作・販売し続けており、メディアによってベトナム国内で活動が知られるだけではなく、海外からもカトゥー織のうわさを聞きつけ、訪問する人たちも増えてきました。

ベトナム中部には、織物文化を持つ少数民族がほかにもいます。FIDRはカトゥー族だけでなくそれらの少数民族が共に織物文化を発信するネットワークの構想を呼び掛けたところ、中部高原地域の5省7民族17グループが参加を表明し、この度、中部および高原地域の織物ネットワークが立ち上がりました。その数はまだまだ増える見込みです。

このようなネットワークの創設はベトナム初で、当日は、国立観光開発研究所所長や、文化スポーツ観光省文化遺産局、クァンナム省内の伝統工芸や文化・観光促進に関する各部署担当者らを含め約100人が参加し、少数民族の女性たちの新たな挑戦に大きな期待を示しました。

織物ネットワーク設立ワークショップ会場 織物ネットワーク設立ワークショップ会場の様子。織物文化を持つ少数民族の女性たちが一同に会しました

ベトナム各民族の織物 会場では、各民族の織物、綿花の木、織物が完成するまでに使用する様々な道具、各民族の紹介バナーなどが展示されました

2019年3月5日

マレーシア研修視察〜地域活性化の優良事例を学びに〜

視察メンバーと訪問先のKadamaian Tourism Association(サバ州)関係者

2月18日から10日間の日程で、「ナムザン郡地域活性化支援プロジェクト」関係者による「マレーシア研修視察」が実施され、クァンナム省やナムザン郡の行政担当者、ナムザン郡内の観光や地域資源開発を担当する少数民族グループの代表者、観光開発専門家の高寺奎一郎氏など13名が参加しました。

今回の視察先であるマレーシアは、マレー系、華人系、インド系のほか、先住民や少数民族で構成される多民族国家で、世界の観光市場においては、今後最も成長が期待される東南アジア諸国連合(ASEAN)の中でもタイに続く「観光先進国」です。その先進・優良事例について、国連世界観光機関(UNWTO)や自治体、民間団体を訪問し、学びました。訪問先のひとつで、サバ州にある「Kadamaian Tourism Association」は、今年1月、ベトナムのハロン市で開催された「ASEANツーリズム・フォーラム」で「ASEANコミュニティー・ベースト・ツーリズム賞」を受賞した団体で、奇しくも「カトゥー族ツアー」を実施する「ナムザン郡カトゥー族観光組合」も同じ会場で同賞を受賞しています。

観光組合の代表を務めるトゥーン氏は「カトゥー族ツアーをふり返る機会となった。初めて外国人として異文化を体験する立場になり、私たちが目指す『家族に迎えられたような体験』をお客様に提供するには何を改善すべきか、考えさせられた」と研修をふり返りました。
また、団長を務めた、クァンナム省農業農村開発局副局長ムオン氏は「マレーシア政府が目指す持続可能な観光開発は、経済振興だけではなく地域社会や自然環境とのバランスを重視しており、ベトナムが学ばなければならない視点だ」と語り、メンバーそれぞれの立場で多くを学んだ研修視察となりました。

JICAマレーシアを表敬訪問

マレーシア観光芸術文化省を訪問し、同国の取り組みについて話を聞く視察団

国連世界観光機構(UNWTO)を訪問

サバ州のKadamaian Tourism Associationが取り組んでいるCBTについての説明を聞く視察団

CBTに参加する現地の人に話を聞く団長のムオン氏(写真右)

観光プログラムを体験する視察団。同じ体験をすることでメンバー間の共通理解と関係構築にもつながりました

2019年2月25日

ナムザン郡カトゥー族観光組合が「ASEANコミュニティー・ベースド・ツーリズム(CBT)賞」を受賞

ベトナムスポーツ文化観光省グエン・ゴック・ティエン副大臣(左写真中央)から表彰される、ナムザン郡カトゥー族観光組合の代表ブリウ・トゥーン氏(同左)

授与された盾

1月18日、世界遺産ハロン湾を有するベトナム北部のハロン市にて、第38回ASEAN・ツーリズム・フォーラム(ATF: ASEAN Tourism Forum)が開催され、ベトナム中部山岳地域で少数民族の村々を訪ねる「カトゥー族ツアー」を運営する「ナムザン郡カトゥー族観光組合」が「ASEANコミュニティー・ベースド・ツーリズム賞(ASEAN Community Based Tourism Award 2019-2021)」を受賞しました。

本フォーラムは、ASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟する10か国が運営し、毎年世界各国から主要政府機関や関連企業等を招いて開催されているものです。東南アジアを大きな観光目的地とすべく、加盟国の観光資源の開発やその質の向上に努めており、今回も2,000名を超える参加者が集いました。

「カトゥー族ツアー」は、FIDRが2012年からの4年間、ベトナム中部クァンナム省ナムザン郡で実施した「ベトナム少数民族地域活性化のための観光開発プロジェクト」の中で形となったもので、外国人を主とする観光客が日帰りでナムザン郡を訪問、少数民族カトゥー族の文化や生活、食事等を体験する内容です。地域住民が立ち上げた観光組合が運営し、地域の人々の生活向上や地域自然の保護につながる観光ツアーを目指しています。

「ナムザン郡カトゥー族観光組合」が受賞したのは、ATFが審査する観光7部門の一つ「ASEANコミュニティー・ベースド・ツーリズム基準(ASEAN Community Based Tourism Standard)」において、厳しい審査項目で基準を満たした団体に贈られる賞で、今年は加盟国10か国から26団体が受賞しました。

ベトナムでは、250を超える団体がこのCBTに取り組んでいますが、今回の受賞はカトゥー族ツアーを含む3団体のみ。ベトナムのみならず、ASEAN地域にもひろく認識されたことになります。

さらに、同観光組合の代表を務めるブリウ・トゥーン氏が、「ベトナム観光開発に影響を与えた20人」の1人に選ばれるという栄誉に浴しました。

ナムザン郡カトゥー族観光組合代表のブリウ・トゥーン氏が紹介された本

ベトナム観光開発に影響を与えた20人の1人に選ばれました

2018年12月25日

「消費者の気持ちになって」村の特色を活かした特産品づくり

開発された5種類のふりかけ。黒ゴマ、干魚、山椒などが原料です

ラスク、ふりかけ、足湯用のハーブやバナナチップス…

農産物や伝統工芸などを活用した特産品づくりが進められているベトナム中部クァンナム省ナムザン郡の村々では、「地域にある物をどう活かすか」だけでなく、「お客様となる人たちが何を求めているか」という発想での商品開発に挑戦中です。
例えば、黒ゴマ。
日本の黒ゴマと比較すると非常に小さな粒ですが、深い香りがします。ナムザン郡の一部の村で以前から栽培されていたものの、安価で低地の人々に販売する程度でした。
そこで開発したのが、日本ではお馴染みのご飯のお供「ふりかけ」。
最近、都市部では昼食にお弁当を持参する人が増えてきており、忙しい共働き家庭やユニークなお土産を求める観光客にもニーズがあると考えました。
「ふりかけ」は日本人好みかと思いきや、ハノイでのテスト販売では、欧米系の人々も面白がって購入してくれました。

そして、ラスク。
外国人観光客が食べ慣れていて、オシャレなお土産として選んでくれることを狙い、パッケージも工夫しました。
トッピングは、自然豊かな山々で採れる胡麻や山椒、生はちみつなどです。

これまでに開発された特産品は、試作品もあわせると100種類以上。
ナムザン郡を訪れる観光客に販売するほか、ホイアンで定期的に開催されている、少数民族文化を紹介するイベント「エスニック・ナイト」に出店したり、ダナン市のお土産屋さんでも取り扱われたりするようになりました。
FIDRスタッフも、パッケージ作りに関わるなど、住民と二人三脚で開発にあたっています。

2018年6月15日

世界遺産ホイアンでの新しいイベントが好評です

毎月開催される「エスニックナイト」の様子

今年2月から古都ホイアンで、毎月「エスニック・ナイト」という新しいイベントが開催され、ベトナム中部の少数民族が観光客に民族舞踊の披露や特産品の販売を行っています。
このイベントは、昨年、クァンナム省、ホイアン市、市内のリゾートホテル、FIDRとで、3か月間試験的に実施した「カトゥー・ナイト」が発展したもので、カトゥー族を含むベトナム中部の約10の少数民族が交代で参加し、FIDRはこれまでのプロジェクトでの実績と地域からの信頼が評価され、各自治体やそれぞれの少数民族グループ、当日のイベントの総括調整を担当しています。

FIDRはイベントの総括調整を担当しています

4月に登場したのは、クァンナム省フックソン郡の少数民族バノン族(Bhnong)で、ホイアンにおいて大勢の観光客と接するのは初めてでしたが、参加した全員が伝統文化を堂々と披露し、観光客を魅了しました。

「エスニックナイト」に参加するバノン族

※イベントのスケジュールはこちら(英語のみ)

2017年9月27日

『持続可能な地域観光セミナー』でカトゥー族の取り組みを紹介しました

当日は多くの方にお集まりいただきました

世界各国・地域から参加者が集う総合観光イベント「ツーリズムEXPOジャパン2017」(会場:東京ビッグサイト)のプログラムの一環として、「持続可能な地域観光セミナー〜サステイナブルな地域観光プロモーション成功の秘訣〜」が9月22日に開催され、JICA観光専門家でFIDRのアドバイザーである高寺(たかでら) 奎一郎(けいいちろう)氏が登壇し、ベトナム中部の山岳少数民族カトゥー族が取り組むコミュニティー・ベースド・ツーリズム(CBT)について事例紹介されました。本イベントには、国内外で持続可能な観光開発に取り組む団体関係者や行政、旅行会社など70名が参加しました。

事例発表の中で、高寺氏は、FIDRが2012年から4年間取り組んだ「ベトナム少数民族地域活性化のための観光開発」プロジェクトでは、段階的に顧客ターゲットを変えながらプロモーションに取り組み、カトゥー族はその過程を通じて「観光とは何か」を学んだことに触れ、最終的に「CBT」を理解してくれる日本人観光客、また「本物のCBT=地域住民の手によって地域のために運営されるCBT」を求めるヨーロッパの観光客が重要な顧客となっている、と述べました。

その後のパネルディスカッションでは、観光とは「顧客に満足を与えるシステム」であり、商業化されていないコミュニティの「本物の笑顔と涙」が訪れた人を感動させること、カトゥー族のツアーでは常に「来てくれる人が満足するためにはどうしたらよいか」を考えていることを伝えました。

※2017年は国連が定める「持続可能な観光国際年」であり、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できるよう、地球に住む人々が一緒に持続可能な新しい観光モデルと考えにシフトしていく始まりの年としています。

事例発表される高寺氏

2017年8月9日

観光都市ホイアンで「ザ・カトゥー・ナイト!」が開催されました

最後には観光客と一緒にカトゥーダンスを楽しみました

ベトナム中部にある世界遺産の街ホイアンは、中部最大の都市ダナン市から近く、夏休みシーズンは日本からの観光客も多く訪れる人気の観光スポットです。このホイアンでベトナム中部山岳地域に暮らす少数民族「カトゥー族」の伝統文化を紹介するイベント「ザ・カトゥー・ナイト!」が6月から8月の間、月1回開催されています。

当イベントは官民連携協力活動の一つとして、クァンナム省文化・スポーツ・観光局が音頭を取り、省観光振興センター、世界的に著名な写真家であるMr. Rehahnが開いている「Precious Heritage Art Gallery Museum」、ホイアンの5つ星ホテルの「アナンタラ」、そしてFIDRが協働しています。2回目となった7月の開催では、ナムザン郡の北側に隣接し、ラオスとの国境地域にあるタイヤン(タイザン:ハノイ読み)郡のカトゥー族ダンサーズが登場しました。FIDRはイベントの実務責任を担い、カトゥー族の意見を取り纏めて行政とやり取りをするなど、彼らが舞台に立つまでの全工程を共にし、サポートしました。

FIDRは、2012年から4年間、ナムザン郡タビン社のカトゥー族と共に地域活性化のための観光開発事業を行いました。そのプロジェクト期間中の2013年から、タビン社のカトゥー族ダンサーズが毎年8月に開催される「ホイアン日本祭り」で踊りを披露し、観光客にも大変好評でした。本年は当イベント以外にダナンで開催された「日越交流フェスティバル」にも参加し、徐々に少数民族カトゥー族の認知度も向上してきました!

当日は伝統舞踊のほか、カトゥー織を始めとする伝統工芸品や本プロジェクト内で発掘・製作された商品も販売され、カトゥー族や彼らの居住地域、独自の伝統文化についてホイアンの人々や国内外からの多くの観光客に知ってもらう機会となりました。なお、当日の様子は多くのメディアにも取り上げられました。

2017年8月8日

新商品が続々と開発されています

新商品の品評会の様子

ナムザン郡では本プロジェクトを通して商品価値のある品々が開発されています。その中の一つにタヴァク(Ta Vac)を利用した商品があります。タヴァクはヤシ科の木で、ナムザン郡ではその果実の房から採れる汁を発酵させてダヴァク酒をつくる風習があります。FIDRはダナン市食品技術専門学校と協力し、このタヴァクの樹液を利用した、お酢とドレッシングを開発しました。

6月、プロジェクト管理をしているナムザン郡の事業管理委員会との会合で、これまでに開発された商品の試食および品評会が行われました。特に関心を集めたのはタヴァクの開発です。ナムザン郡の科学技術局の副局長は「これまでにもダヴァク酒の商品開発を試みたが、難しく成功しなかった。これは実に見事な成果だ」と試作品の完成を喜びました。

品質は良いものの、今後は保管期間を延ばす工夫や誰がどのように作成し、衛生管理を担っていくのか等、商品つくりの仕組みを強化していきます。まだまだ課題も多いものの、自治体も住民もやる気に溢れているので、今後が非常に楽しみです!

各地域で定期的に開催されている研修では初期段階からリーダーの育成に力を注ぎ、非常に積極的かつ情熱的なリーダーが育成されつつあります。今後も行われる宝探し・宝磨きのための研修に多くの住民が参加し、住民主体による地域おこしが進められることを願っています。

2017年5月26日

おばあちゃんに続け!

ナムザン郡でもレアな「かすみ(しぼり)」の技術を持つおばあちゃん

「ナムザン郡地域活性化」プロジェクトでは、地域の宝さがしが始まっています。先日、ナムザン郡内の対象地域の社*を代表する人たちが集まり「宝物リスト」を作ったところ、200近いアイテムが出てきました。参加した人たちの様子を見ると、童心にかえったように楽しそうです。

さて、FIDRがずっと懸念していたことがあります。今から数年前に実施した「ベトナム少数民族手工芸支援」プロジェクトのころ。織り手が少なくなった伝統織「カトゥー織」の技術を後世に伝えるべく立ち上がった女性たちをFIDRは支援していましたが、そこである情報を手に入れます。より山深い地域に、遠い昔より綿花を栽培し、天然染色を行い、ナムザン郡でもレアな「かすみ(しぼり)」の技術を持つ女性がいる・・・と。しかもその女性はすでに高齢で、外国人も入れない国境に近い山岳地で暮らしているというのです。

「このおばあちゃんがいなくなったらどうなるの?」FIDRはそんな不安を抱きつつも、まずは伝統を継承させるために先に動き出した若手の女性にカトゥー織の織り方を習得してもらうことを優先させ、少数民族の女性による協同組合もつくりました。

そして数年たった今、地域で実施したこの「宝さがし」を通じて、以前はほぼ興味を失っていた女性たちが「おばあちゃんが宝物だ」と感じてくれ、綿花の伝統栽培および染色技術を直接学びたい、と言ってくれたのです!FIDRは嬉しくて泣きたくなりました。

おばあちゃんもまだご健在。とはいえ時間が限られる中、彼女たちの伝統を受け継ぐチャレンジが始まりました。「伝統を途絶えさせまい!」と、おばあちゃんと同じ村に住む彼女たちは、熱心におばあちゃんの家に通い、現在その技術を自主的に学んでいます。

さぁ、「おばあちゃんに続け!」

*社:「村」の上位行政単位

伝統技術を若者に伝えるおばあちゃん

2017年4月13日

松阪市の皆さんがプロジェクト地を訪問してくださいました

松阪市の皆さん。市を代表する「松阪木綿」を着用されてお越しくださいました

「ナムザン郡地域活性化支援」プロジェクトでは、地域の宝さがしが始まり、次々と住民グループが立ち上がってきています。そんな「宝さがし」に一役買ってくれているのが、ツアーに参加してくださっている観光客の皆さんでもあります。

2月には、「木綿」で知られている三重県松阪市から、市の観光課の方をはじめとし、松阪木綿の織り手さんや販売店の皆様が、ナムザン郡の少数民族により結成された織り手グループのもとを訪れてくださり、カトゥー族、タリーン族によるそれぞれ独自の染色や織物の手法について体験されました。日本からの織物グループのツアーとのことで、当日はナムザン郡全体から、カトゥー族だけではなく、タリーン族さん達も集まり、まるでナムザン郡と松阪市の織物サミット!普段なかなか体験できない「異文化交流」を、お互い楽しんでいらっしゃいました。

国は違えど、さすがは織物の織り手さんたち。言葉は通じず、ジェスチャーを交わしながらでしたが活発なコミュニケーションを行っていました。織物のプロ同士の交流ということもあり、お互いに何かを感じる時間でもあったようです。

松阪市の皆さんがお帰りになられた後、ある女性がやや興奮気味に話し出しました。「ナムザン郡のカトゥー族をはじめ、タリーン族、ヴェー族さんも一緒になり、今後それぞれの独自の染色や織物をさらに向上していこう」。その場で話を聞いていた人たちも共感し、いつかはナムザン郡全体の織物ネットワークを立ち上げようという話にまで発展しました。

やはり少数民族の代表的なものは織物であると感じつつ、女性たちの行動の早さにも驚かされた日となりました。

2017年1月11日

ダナン市においてナムザン郡農産物の販売がスタートしました

ダナン市内にあるオーガニックショップの「カトゥー・ナムザン農産物」コーナー

2016年3月に完了した「ベトナム少数民族地域活性化のための観光開発」プロジェクトでは、「地域の宝もの探し」活動を通して数多くの商品価値のある品々が発掘されてきました。その後続事業である「ナムザン郡地域活性化支援」プロジェクトがナムザン郡を対象としていよいよ始まり、地域の特産品となる可能性のあるものの販売を試験的に始めました。

今回協力してくれたのは、ベトナム事務所があるダナン市にあるオーガニックショップ。経済がよくなるにつれ健康志向のベトナム人も増え、有機栽培など農薬を減らし環境や人に配慮して育てられた農産物は高価でも売れるようになり、市内にも有機野菜販売店が数多くみられるようになりました。

栽培方法なら大自然の中で育ったナムザン郡の農産物は無農薬で一級品!です。「カトゥー・ナムザン農産物」コーナーを設け、別のプロジェクトで普及をしている「SRI農法」で栽培された米10袋、山岳地の丘で自然栽培されている陸稲米10袋、そして自然栽培の豆30袋を店内に置かせてもらったところ・・・なんと即完売!すでに追加注文をいただいています。

幸先の良いスタートで、事業関係者もスタッフも次なる特産品探しに意欲的に取り組んでいます!

SRI農法で栽培された米、陸稲米、5種類の豆を試験販売しました