2019年12月に中国からはじまった新型コロナウイルス(COVID-19)の感染流行は、東南アジア・南アジア各国にも急速に広がっています。FIDRの活動国であるカンボジア、ベトナム、ネパールでは、国内でのウイルス検査や治療の体制が十分には整っていないうえ、衛生物資が不足しています。感染予防に有効な公衆衛生の知識や習慣がない人々も少なくありません。
こうした土地で感染の大流行を防ぐため、FIDRは現地の行政と連携し必要とされる対応を行っています。
世界中で感染が拡大している新型コロナウイルスは、ネパールでも危機的な状況を引き起こしています。2021年4月下旬から隣国インドでの感染急拡大が波及し、ネパールでも感染者数が急増しました。インドや首都カトマンズでのロックダウンにより、生計を立てられなくなった人の多くが地元に戻ったため、それまでほとんど感染者がいなかった農村部にも感染が拡大しました。人口は日本の4 分の1 に満たない国ですが、5 月には新規感染者が9 千人台を記録する日も出ました。その後、感染者の増加は収まってきましたが、9 月下旬でのワクチン接種完了率は2 割にとどまり、予断を許さない状況が続いています。
医療施設が整っていない農村部では、重篤化した患者のみが郡の中心部にある病院へ搬送されて治療を受けることができます。各村には重症化した患者を隔離するセンターが設置されていますが、設備や人材が不十分で対応できる患者数には限りがあります。そのため陽性患者の多くは自宅にて家族の介護のもと療養生活を送り、保健スタッフが集落を巡回して容態を確認しています。
FIDR は現地行政からの要請を受け、ネパール東部にあるソルクンブ郡とオカルドゥンガ郡へ支援すべく準備を進めました。9 月に現地パートナー団体とともに、両郡に設立された隔離センターや集落巡回にて使用する酸素濃縮器、パルスオキシメーター、抗原検査キット、医療従事者用の個人防護用具(PPE)セットを現地に届けました。
支援物資の引き渡しの様子は現地のFM局のニュースで放送され、同社のホームページでも「支援物資はFIDRネパール事務所の前田所長よりオカルドゥンガ郡チサンクガディ村のニシャント・シャルマ村長に引き渡されました。シャルマ氏は、支援していただいた物資は、住民の新型コロナウイルス感染症の治療と感染予防に役に立てたいと語りました」と紹介されました。
多くの個人・法人の皆さまから寄せられた募金のおかげで、この支援活動を行うことができました。皆さまの温かいご支援に、心より感謝申し上げます。
活動の詳しい報告は下記をご覧ください。
https://fidr.jimdosite.com/最新支援情報/
FIDRは株式会社カスタネットからのご寄付により東京都の障がい児施設3か所にアイソレーションガウン(医療用防護服)500着を寄贈しました。
株式会社カスタネットは社会貢献に努めておられ、長年にわたりFIDRのプロジェクトを応援してくださっています。新型コロナウイルの感染が日本国内で広がり始め、医療や福祉の現場で予防対策の徹底が求められるや、同社は率先してアイソレーションガウンの提供に取り組みました。FIDRは東京都福祉保健局を通じて都の障がい児施設でアイソレーションガウンを必要としているとの知らせをうけ、株式会社カスタネットに協力を依頼しました。
7月8日、株式会社カスタネットの植木力社長から東京都福祉保健局指導監査部の本多由紀子部長に寄贈目録が手渡されました。植木社長はこのガウンの品質は国際的に認められるものであり、施設の職員の方々に安心して使ってもらえると説明されました。
同席された東京都社会福祉事業団の渋谷恵美事務局長は「障がい児施設では、職員は子どもたちと常に近くに接する仕事にあたるため、衛生管理が特に重要です。新型コロナウイルスの流行以来、アイソレーションガウンのような感染予防用品は医療機関に優先的に仕向けられ、福祉施設ではなかなか手に入りづらい状況にあります。今回のアイソレーションガウン500着は2日に事業団に届き、さっそく使用しています。」と語られました。
新型コロナウイルスの1日も早い終息は、誰もが願っているところです。そのために保健医療や福祉の仕事に携わる方々は感染者の治療や未然に感染を防ぐために非常に重要な働き担っておられます。
そうした現場の方々をぜひとも応援したいと、FIDR設立時からの法人賛助会員であるミヨシ油脂株式会社は、社員の皆様が募金を寄せてくださり、その全額をFIDRに託してくださいました。これを有効に使わせていただくべく、サージカルマスク3万枚と18ℓ缶入りアルコール消毒液352缶を調達して、都内の病院や福祉関連施設に届けることとしました。これらの物資は国内で極度に品不足となったため、医療や福祉の現場では大変に苦労されているとの事情を捉え、FIDRは業務用のみを扱っている事業者を通じて購入し、速やかに輸送しました。
マスクは、都立墨東病院(墨田区)に24,000枚、昭和大学病院(品川区)に6,000枚を寄贈しました。5月28日にミヨシ油脂株式会社の三木逸郎社長から都立墨東病院の筒井健治事務局長に寄贈目録が手渡されました。「マスクが少しでも役立つことを願っています」と述べられた三木社長に、筒井事務局長は深い感謝の意を表されました。「今なお消耗品の入手は容易ではなく、大変にありがたく感じます。」
アルコール消毒液は、東京都内90か所を超える児童福祉施設や保護施設などで使用されます。6月18日、三木社長より東京都福祉保健局の本多由紀子指導監査部長に寄贈目録が贈呈されました。本多部長は「時宜に適った支援が本当にありがたい」と述べられました。「東京都は陽性確認者が国内で一番多く、まだこれからも予防対策に努めていかなければなりません。児童関係の施設では手指だけでなく、遊具や家具などの消毒に必要なアルコール消毒液ですが、価格が高く入手が困難な状況が続いていたため、大変に感謝しております。」
世界中の人々を不安と悲しみに陥れた新型コロナウイルス。私たちができることはわずかかもしれませんが、FIDRはご支援いただく皆様と力を合わせてこの困難を乗り越える働きの一端を支えてまいります。
カンボジアにおいても、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、6月1日時点の感染者数は125名と発表されています。これまでに、感染がより深刻なタイ等の近隣国から推定4〜5万人の出稼ぎ労働者が国内各地に帰還しており、コミュニティレベルでの感染拡大が懸念されてきました。カンボジアの地方部では、医療機関といえども感染予防のための資材や消毒液等の備えは十分ではありません。
現時点で123名が治療を終えており、死者も発生していませんが、気の緩みによる第二波を防ぐためにも、FIDRでは引き続き事業地での注意喚起や防止策の啓発活動を続けています。カンボジア事務所では3月下旬から事務所を閉鎖し、活動の一時中断を余儀なくされました。4月には政府により国内での移動制限も発出され、緊張感が高まる中、感染状況を注視しながら活動再開時期を探ってきました。
このような状況下で、小児外科支援プロジェクトを展開するクラチェ州のFIDRスタッフは、クラチェ州の保健行政機関である州保健局とともに、不安に怯える地元の人々を、そして医療従事者を守るための支援を探りました。その結果、遠隔でも届けることが可能な物資として、緊急性・必要性の高い①医療用マスク140箱、②非接触型の赤外線体温計27本、③アルコール消毒用の噴霧器1台の支援が州保健局よりFIDRに対して要請されました。
4月22日、無事にこれら支援物資をクラチェ州保健局に届けることができました。支援物資の購入にあたっては、FIDRの法人賛助会員であるソントン株式会社からのご寄付を頂きました。
州保健局長によると、他ドナーからの支援はマスクが中心のため、噴霧器の支援はこれが初でした。クラチェ州では噴霧器の常備がなくこの一台のみであるため、局内で管理して必要な場所へ随時貸し出すことになりました。予防のリーダーシップを取るべき州保健局が医療機関内の消毒を徹底するためにも、噴霧器は必須のアイテムです。感染予防のためには各医療機関に一台常備するのが理想ですが、希釈するアルコールも貴重品ですので、節約しながら順番に使わざるを得ないのが実情です。体温計とマスクは、保健センターなど住民が最も身近に接する医療機関へ速やかに配布されました。
カンボジア事務所では5月下旬より、感染予防対策を行った上での活動を再開しています。これまでのように大人数の住民や患者を集めて研修を行えないなど制限はありますが、現場を久々に訪れることができ、馴染みの人々と再び会うことができる喜びには代え難いものがあります。活動停止で一旦は止まった時間を、また少しずつ、且つ慎重に、動かすべく現場のスタッフは今日も忙しく活動しています。
カンボジアでは、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大への対応のため、3月半ばから、段階的に学校の休校措置や入国制限がとられるようになりました。さらに4月10日以降は、国内で移動制限が課せられています。感染者数は、4月13日現在122人と発表されていますが、国内でのウイルス検査や治療の体制が十分には整っていないことから、感染の拡大が懸念されています。また、不確実な情報も拡散されており、多くの人々が不安をあおられています。
このような状況から、FIDRが農村部で行う「コンポンチュナン州農村開発プロジェクト」も、3月末より活動の一時停止を余儀なくされています。
「活動の一時停止」という苦渋の決断を下した3月下旬、これに伴い同州を離れることになるプロジェクト担当スタッフに残された時間は1日しかありませんでした。スタッフ全員の心の中には「プロジェクト地の人々のために、今、何ができるだろうか」という想いがありました。
3月の時点で、保健省と国際援助機関がCOVID-19の感染防止を目的とするポスターを共同制作していました。また、広く国民が情報を得るために活用しているFacebook、テレビ、ラジオからは情報が発信されていましたが、実際に村の人々に正確な情報が届いているかは確認されていませんでした。さらに、保健センター長への聞き取りで「州保健局から予防対策に関する指示はきていない」ということが分かっていました。
スタッフの意見が一致したのは、人々に正しい知識と“予防”という考え方が足りていない、という危機意識でした。人々は、ただただCOVID-19という未知なものを恐れるばかりで、拡散される不正確な情報に不安をあおられ、正しい情報かどうかを見極めることもできずただおびえている、という状態だったからです。
また、そもそも文字が読めなかったり、テレビを観ることができなかったり、携帯電話を持っていなかったりと、十分な情報が得られていない人々もいました。それらに加え、“予防”という観点をもつ人も少なく、感染を怖がりながらも、積極的に予防のためになにか行動を起こしている人はごく少数でした。
そこで、プロジェクトのカウンターパートである州保健局や保健行政区、保健センター、地区評議会のメンバーらと連絡をとって情報収集を行い、その結果、プロジェクト対象地の全5地区において、COVID-19の正しい情報と予防方法を広く周知することを目的とした”COVID-19予防キャンペーン”を展開することにしました。
当日はトゥクトゥクやトラクター、バイクに乗って地区評議員、村長、警察らとともに村を周りながら、拡声器を通じてCOVID-19について説明し、 “ただただ恐れるのではなく、積極的に予防していこう”というメッセージを、地区評議員らが自らの声で力強くコミュニティに呼びかけました。
中国から始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、東南アジア各国にも急速に広がってきました。国連世界保健機構(WHO)の発表によると、3月30日時点の感染者数は約7,300人にのぼりました。
FIDRは事業国のひとつであるベトナムで、3月中旬、感染予防のための緊急支援を実施しました。
ベトナムでは、政府が比較的早い段階から入国制限や学校の休校措置、感染が疑われる人の隔離措置などの策を講じてきたため、確認されている感染者数は179人と、日本などに比べると少ない数にとどまっています。しかし、国内でのウイルス検査や治療の体制が十分には整っていないうえ、出稼ぎなどで諸外国にいた人々が大勢帰国することで、さらなる感染拡大の危険性をはらんでいます。
加えて、予防に欠かせない衛生物資の不足は、他国同様に大きな課題となっています。特に、山岳地域では、公的医療機関の対応が困難になってきており、日々の業務に差し支える深刻な状況となりました。
FIDRは、ベトナム中部地域の行政機関から要請をうけ、3月中旬、プロジェクト地であるベトナム中部のコントゥム省およびクァンナム省の山岳地域6郡に対し、アルコール消毒液5リットルボトル500本、石鹸約15,000個、ビニール手袋50,000組などの衛生物資を提供しました。これらの品は、国内でも調達が困難な状況下ながら、FIDRの法人賛助会員である山崎製パン株式会社の海外拠点「ベトナムヤマザキ」(ホーチミン市)のご協力をいただき、現地の業者から速やかに取り寄せることができました。
政府の指令により、国内の移動が大きく制約され、FIDRスタッフも各地へ赴くことが容易ではなくなっていましたが、プロジェクト活動を通じたつながりから、地元に戻っていたスタッフと保健局が連携し、保健所56か所、郡病院6か所、感染症センター8か所の計70の施設に対し、支援物資を滞りなく届けることができました。