ソルクンブ郡とオカルドゥンガ郡は、首都カトマンズから東におよそ250㎞の距離にある山岳地です。ソルクンブ郡の北部にはエベレスト山がそびえており、その麓周辺に限っては登山客でにぎわい、観光が地元経済の柱となっています。外国人の来訪が多いエリアには比較的関心が集まりやすく、2015年の大地震の後は学校などの再建のためにいち早く支援が集まりました。しかし観光客が訪れる地域の外側に、その恩恵は及びません。
今から10年ほど前まではソルクンブ郡、オカルドゥンガ郡からカトマンズにつながる自動車道路はなく、高額な飛行機を使えない人々は何日間もかけて歩いていくしかありませんでした。ようやく道路ができ、カトマンズへは車で約12時間で結ばれるようになりましたが、山深い村には人々の生活や将来に立ちはだかる多くの課題が今なお存在しています。
FIDRは両郡で調査を行い、住民の間で特に改善への関心が高い問題を明らかにしました。
衛生的な水へのアクセスが不足していることや、農業用水が乏しく、農業生産力も低いこと、現金収入が不安定なために出稼ぎに頼る傾向にあることなどが共通しています。
また、学校校舎が老朽化し、教具・教材も不足していることも早く解決すべき課題です。
ネパールはインドと中国の2大国に挟まれ、20世紀の半ばまでは鎖国的な政策を取り、1990年代からは共産主義勢力が伸長し、ついには王制が崩壊するという動乱が続きました。アジアの多くの国々が着実に経済成長を遂げる中でネパールは遅れを取りました。ようやくそこから脱却しようとしたところに、2015年4月にネパール中部を大地震が襲い、広い範囲で甚大な被害が生じました。UNDPによる人間開発指標では、ネパールはアジアの中で最低位国の一つに数えられ、教育、保健、農業、地域経済など人々の生活に直接かかわる分野で多くの問題を抱えています。
FIDRは2009年よりカブレパランチョーク郡、ダーディン郡、ラメチャップ郡で農村開発や教育の分野でプロジェクトを実施してきました。その成果を活かし、より支援ニーズが高い地域の人々に寄与するため、入念な調査を行った結果、ソルクンブ郡およびオカルドゥンガ郡を対象地と定めました。
山岳地では農業を離れ、出稼ぎにでる若者が多く、農村の生産力とコミュニティの活力がさらに低下する悪循環に陥る危険性が高まっています。地域住民と行政が自らの力で課題を解決し、生活を改善していくための取り組みが必要です。
住民と行政が協働し、農業生産力の向上と収入の安定を図り、子どもたちが健康に育つコミュニティーづくりを目指します。
ソルクンブ郡ネチャサリャン村
オカルドゥンガ郡チサンクガディ村
2021年度~2026年度
地元の人々が計画づくりから参加し、民族や階層の壁を越えた協力で生活とコミュニティーを改善していけるようにします。