カンボジアで初めて、病院での「栄養管理」が始まりました
ロン君への栄養指導について協議する高増医師
(神奈川県立こども医療センターアレルギー科医長 写真左)とパゥ医師(写真中央)
病気からの早期回復や体力や免疫力の維持のため、治療の一環として栄養面から患者をケアし、栄養状態を改善していく「栄養管理」。FIDRは、国立小児病院(以下、NPH)において、カンボジアで初めて「栄養管理」を導入するために、昨年から研修やガイドライン作りなどの支援を行ってきました。
NPHでは、いよいよ夏から、「栄養管理」が実践され始めました。
パゥ医師は、担当患者のロン君(仮名)の身体の成長が、近頃思わしくないことを気にかけてきました。ロン君は、幼いころにHIV陽性と診断され、9歳になる今まで、NPHに定期的に通院し、治療を受けています。HIVの患者にとって、投薬治療はもちろんのこと、体力や免疫力を保つための栄養管理もとても大切です。
9月、パゥ医師は、ロン君の日々の食事内容と量を確認することにしました。そして、ロン君の通院日に、前日の食事内容を細かく聞き取り、摂取エネルギーと栄養素を算出しました。結果、ロン君は、同年代の子どもと比較してエネルギー摂取量が少なく、一日3食をしっかりと食べられていない反面、菓子などの間食からのエネルギー摂取が多いことが分かりました。
そこで、パゥ医師は、ロン君や母親と話をし、身体の成長に必要なエネルギーと栄養素を摂取できるようになることを目標に、まずは朝食をしっかり食べることから始めるように指導しました。
10月に入り、ロン君は前日の食事を記録した用紙を持って来院しました。そして、カンボジアの食品の写真を収めた本※を見ながら、パゥ医師からの質問に次々と答えていました。診療の結果、体重に大きな増加は見られなかったものの、9月の通院時には欠食しがちだと言っていた朝食もしっかりと食べていることが分かりました。
パゥ医師は、ロン君が体力を維持し成長していけるよう、栄養指導などの対応を続けていきます。
写真本を使って、前日の食事を説明するロン君(写真右から2人目)
カンボジアではまだ珍しい栄養指導を、楽しんでいるようにも見えました