自らの力で新たなことに挑戦する農家が現れはじめました
「はじめは失敗の連続でした。」
そう笑いながら話すのは、2人の子どもと奥さんと暮らすソパットさん、32歳。2012年に初めてFIDRの研修に参加して以来、SRI農法や養鶏、養豚を実践し、自らの経験を他の農家にも積極的に共有して技術の普及に大いに貢献してくれている、篤農家の一人です。
そんな彼に、驚かされた出来事がありました。
なんと鶏卵用の孵卵器を自ら設計・製作したのです!
「鶏卵の人工ふ化をやっている人は村には誰もいませんでした。みんな自然にふ化させるか、市場まで出かけて生まれたひよこを買ってくるしかなかったんです。なので、もし僕がこの村で一度にたくさんの鶏卵を人工ふ化させることができれば、そこにビジネスチャンスがきっとある、と思いました。」
人工ふ化への挑戦を決めたソパットさんは、一昨年、FIDRが行った視察研修に参加し、隣の郡の農家で人工ふ化の様子を見学しました。そして昨年は、農家からの強い要望に基づきFIDRが実施した人工ふ化についての技術研修において、鶏卵のふ化の仕組みを学びました。
そうしていざ孵卵器をつくってみようと作業を開始したソパットさん。はじめの頃は内部の温度・湿度調節が難しく、失敗ばかりでした。半数以上の卵がふ化しないこともありました。そんな彼をFIDRは励まし続けました。
ソパットさんはくじけず卵を観察し続け、温度調節方法など改良に改良を重ね、1年かけてようやく孵卵器を完成させました。
現在ソパットさんは、この孵卵器により毎月計200羽ほどの雛をかえして村人に販売し、月額約200ドルの収入を手にすることができるようになりました。また、彼の設計・製作した孵卵器は地域でも評判を呼び、月に数件の製作注文が入るまでになり、一台につき約150~350ドルで販売しています。
農家の人々が、自らの力でより良い生活を作りだせるようになること。その目標にむかって後押しを行ってきた私たちにとって、彼の努力は大きな希望です。
「何度失敗しても諦めなかったのは、そこに家族とコミュニティーの生活をより良くするチャンスがあると思ったから。」
そう話してくれた彼に、私たちスタッフは大いに勇気づけられたのでした。