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ベトナムの山村で、日本の「改善」が役立った ーコントゥム省子どもの栄養改善プロジェクトの6年間ー(その2)

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台所は誰のもの?

この地域の伝統的慣習では、台所は姑のテリトリーです。どうしても昔ながらのやり方が続き、若い嫁はなかなか手出しできません。
開発途上国で実施される離乳食研修では通常、大鍋を使って皆で調理しますが、このプロジェクトでは、各自が食材を持ち寄り、小鍋で実習する方式を取ってみました。説明も、これまで行政が使用してきたベトナム語ではなく、各少数民族の言葉です。そして、個人の創意工夫を奨励しました。研修は、単なる知識や調理法の説明に終わらず、母親が自宅ですぐに実践できる経験を得る場になったのです。
この「本人任せ」の研修を続けると、雑然として不衛生だった台所に変化が見られるようになりました。機能的に整理整頓され、衛生面がぐんと改善されただけではなく、調理具や食器、調味料が増えてきたのです。姑もそれを悪く思うはずがありません。また、食卓に出る料理の品数が増えたことは、栄養の観点からも好ましい変化です。家庭での創意工夫は次の研修で共有されます。いつしか離乳食研修は、母親たちの情報共有の場になっていました。FIDRは、こうした変化を積極的に応援しました。
 母親の姿に触発され、父親も変わり始めました。子育てに関心を持つ父親がいることを知ったFIDRは、父親を離乳食研修に呼んでみました。すると参加する父親の数がだんだん増え、家庭でも腕を振るったり、育児に協力したりする人も出てきたのです。この地域には「家事や育児、農作業を女性が担い、男性はあまり働かない」という慣習がありますが、この活動を通じて、特に若い世代の夫婦の意識が変わってきました。


(写真)父親の「離乳食コンテスト」も開かれ、腕を競いました