栄養の教科書原稿が完成しました
教員用の指導書
新しい教科書
カンボジアでは、2025年から学校教育に保健科目が導入され、その一部として栄養教育が始まる予定です。FIDRは、2019年からカンボジア教育省とともに、栄養の教科書づくりに取り組んできました。
今年度、小学 1 年生から高校 3 年生までの教科書原稿がようやく完成しました。
教科書づくりは決して簡単ではなく、その過程で様々な課題にぶつかりました。
まず、教育省の職員が栄養について学んだ経験がなく、栄養についての基本的な理解も曖昧でした。
また、日本語の専門用語に対応するクメール語(カンボジア語)の言葉がなかったり、同じ言葉に対する日本人とカンボジア人との解釈が違ったりしました。
さらに、年齢に適した教科書とはどのようなものか、職員にはイメージがありませんでした。そのため、例えば小学1年生向けの教科書なのに、最初は挿絵がほとんどなく文字だらけの原稿になってしまいました。
これらの課題に対処するため、FIDRは、様々な工夫を凝らしました。
第一に、「五大栄養素とは?」など「栄養の基礎講座」を教育省の職員向けに実施しました。
説明は極力シンプルにし、実験や視覚教材を取り入れた講座を繰り返し行い、言語や解釈の違いにぶつかるたびに1つ1つ説明し、解決しながら進めていきました。
そのうち、「もっと詳しく知りたい」「他のことも教えて欲しい」という声が上がるようになり、講座で得た知識を自分の食生活に取り入れる職員もでてきました。
第二に、教科書の執筆方法です。
このような講座を経て栄養の知識を得た教育省の職員が、教科書に載せたいと思った内容を選んでまとめ、それをFIDRスタッフと一緒に確認しながら加筆修正するという方法で、進めました。
第三に、テスト授業を経ての改善です。
最初の教科書の試案が完成すると、それを使って学校の先生にテスト授業を行ってもらい、子どもたちの反応や先生のフィードバックを取り入れながら改善を加えていきました。教科書の中身は、先生が使いやすく、また子どもたちが興味を持って楽しく学べるよう、できるだけ写真を沢山使うように工夫しました。
教科書原稿は現在、教育省で最終確認が行われており、教育大臣の承認を得て印刷される予定です。はれて完成した教科書を学校で子どもたちが手にする日が、今から待ち遠しいです。
教育省職員向けの栄養講座の様子
仮教科書を使ってのテスト授業