一人でも多くの患者へ治療を届ける、手術ミッション!
手術の様子
6月27日からの3日間、クラチェ州病院で「手術ミッション」を実施しました。ミッションとは、子どもの外科患者さんを対象に、短期集中でできるだけ多くの患者さんを診察して、必要な手術を最大限に行う大きなイベントです。患者をより幅広く集めたい州の意向により、今回に限り患者さんの診療費は無料と決まりました。
この企画に賛同頂いた医師や看護師の皆さんが日本やプノンペンからも駆けつけ、日本からは医師3名、プノンペンの国立小児病院からも医師3名と看護師1名が参加されました。クラチェ州病院からは、外科・手術部の医師・看護師が約20名の他、日本人看護師としてもJICA海外協力隊員1名や、元看護師のボランティアの方1名が関わってくださいました。
手術ミッション期間中、実に200名もの患者さんがクラチェ州病院を訪れ、当日、待合場となるテントの屋根の下は大混雑でしたが、終日かけて全ての患者さんが診察を受けることができました。そのうち、手術が必要と判断された患者さんは50名ほどで、手術が不要な患者さんはその場で処置を受けて帰路につきます。中には僻地から遠路はるばる来た家族や、生まれてから初めて本格的な手術を受ける小さな患者さんも多く見られ、改めて手術が受けられるという機会がこの地域では貴重なものだと私たちFIDRも痛感しました。
手術室では手術の種類によって2~3チームに分かれ、同時並行で手術が進みます。
日本人とカンボジア人の外科医、麻酔科医、器械出し看護師が混合チームを組み、クラチェ州病院の若手の医師・看護師が先輩たちから手技やポイントを学ぶ姿も見られました。手術を終えた患者さんは別室に移動して、麻酔から覚めて容態が安定すると入院病棟のベッドへと移り、看護師が巡回しながら術後の管理が徹底されました。
また、この入院病棟の一角では入院患者さんや付き添いの家族に楽しい時間を過ごしてもらえるよう、ペイントワークやゲームなどアクティビティの時間や、歯磨き指導の時間も設けられました。(こちらの様子は続報でお伝えします!)
今回の手術ミッションでは、患者の治療だけが目的ではなく、「チェンジ」、つまり何かを変えるきっかけになることを願って企画されました。
まず、クラチェ州病院の医師や看護師が日本人や国立病院レベルの先輩たちから治療方法を学んで今よりもステップアップするために。そして、当日の治療だけで終わらず、手術後の患者さんの回復をしっかり観察して必要な術後ケアが行えるように手術後の患者管理の大切さについて学ぶために。さらに地元の皆さんに対しても、「あの病院に行けばしっかり治療してもらえる。わざわざ遠くまで行かなくても済む。」と幅広く知ってもらうために。
終了後、クラチェ州病院の職員からは、「手術中に日本人医師や国立小児病院の医師から直接指導してもらえたことが実践的な学びとなり、自信もついた」との感想も聞かれ、彼らのチェンジが実を結んだことを実感できました。
この3日間だけでは手術を行えなかった患者さんも数多くいました。翌週に再び来るように呼びかけていましたが、今後は無料にはならないため、本当に来てくれるか定かではありませんでした。それでも、自己負担とわかった上で再び訪れてくれた患者さんたちも実際にいました。今回、初めて来院して病院がどのような場所かを知り、そこで働く医師や看護師の顔が見えたことにより、信頼を寄せてくれた証しです。
3日間、クラチェ州病院にはたくさんの患者が訪れたため、FIDRスタッフも病院職員も目が回る忙しさでしたが、確かな「チェンジ」が見られ、今回のミッションの成果を感じることができました。
「手術ミッション」に参加された医師や看護師の皆さん
ミッション中は、特別にイベントやゲームなども開催。多くの子どもたちが参加し笑顔があふれました