貧困と医療
ボランティア:青木映南
カンボジア小児外科支援プロジェクトで、2023年6月27日~29日に行われた「手術ミッション」に、ボランティアとして参加してくださった青木映南さんのご寄稿を、3回にわたってご紹介しています。本記事は、その第3弾です。
★青木さんのご寄稿第1弾はこちら
★青木さんのご寄稿第2弾はこちら
チョムリアップスオ!青木映南と申します。カンボジアのクラチェ州で行われた手術ミッションにボランティアとして参加させて頂きました。
私は、今回でカンボジアに来たのは4回目になりますが、クラチェ州を訪れたのは初めてでした。高床式の家が並び、牛が歩き、子供たちが自転車で学校に向かう。ポストカードで見たようなカンボジアの田舎の風景を見る事が出来ました。今回のクラチェ州立病院の手術ミッションは、無料で行われたためクラチェ州以外の場所からも患者さんが多く来られました。この記事では、ミッションで感じたカンボジアの貧困と医療の問題について取り上げます。
今回のミッションで口唇口蓋裂の患者さんとお会いしました。口唇口蓋裂は唇の上の部分や口蓋が割れてしまう生まれつきの病気です。手術せずにいると、哺乳・発語の問題や、見た目上の問題があり、手術する必要があります。手術後は傷口を保護するためのテープを貼り、退院後もテープの交換をする必要がありました。クラチェ州では、日本で売っているような医療用のテープは販売していないとの事でした。そのため、市販の絆創膏で良い事を医師が説明しましたが、絆創膏は高価で買う事が出来ないと家族から訴えがありました。その患者さんのご家族はカンボジア北部の方から来られ、その日の食事を買うお金もありませんでした。また、1週間後抜糸のため再診が必要でしたが、再診するための交通費の問題もありました。日本の相対的貧困とは異なる「絶対的貧困」という問題について考えるきっかけとなりました。
口唇口蓋裂の小児患者(手術前)
口唇口蓋裂の小児患者(手術後)
今回のミッションでは、「医療者としてどこまで患者家族に介入するべきなのか」という点について考える時間が多くありました。前述したような貧困家庭の患者さんは1人だけではありません。今回のミッション中の手術は無料で行われましたが、通院費、薬代、病院滞在中の食事代等は家族が負担しなければなりません。術後は食事や水分が取れているかどうかで、点滴を抜くのか続けるのかを決めますが、食事を買うお金が無い場合はどうなるでしょうか。誰かが1人の患者さんにその日の食事代や薬代を渡すのは簡単な事ですが、全ての患者さんとなると難しい問題になります。医療は「手術」だけではなく、術後も退院後もずっと続くものです。手術は受けられたとしても、術後の診察に来られない、術後必要な医療物品が買えないとなると、術後に創部が感染するなどの問題が起こる可能性もあり、どこまで介入するべきかを考える必要がありました。このミッション期間中では、この問題に対する答えは出ませんでしたが、全ての人が医療にアクセスでき、安心して暮らせるような世界を目指すため、私自身も考え続け、行動していきたいと思います。
※当ウェブサイト上の写真は、保護者ならびに医療施設の承諾を得て撮影・掲載しています。