「給食に入っているのはうちの野菜!」~地産地消の学校給食、農民組合の大躍進~
カンボジアのコンポンチュナン州は、急速に発展を遂げる都市部との格差が大きい地域のひとつです。FIDRはここで2007年から長年にわたって、農家の生産性の向上や生活改善のために活動しています。特に近年は、農民が協力して営農に励むための仕組み作りとして、農民組合の組織化を支えてきました。
カンボジアの農民組合は地区ごとに構成され、個々の農家が互いに助け合いながら農業を営み、販路の拡大や小規模融資などを通じて組合員が安定した農業収入が得られることを目指しています。今回登場する2つの農民組合は2021年度にFIDRが組織化を支えた組合で、それぞれ51世帯、66世帯が加入しています。
2022年12月、この2つの農民組合が競争入札を初めて経験して、見事、地元の学校給食に食材を販売できる卸業者として認定されました。経験の浅い両組合にとって、これは喜ばしい快挙でした。
カンボジアの公立学校は基本的に半日制のため、給食がありません。この学校給食プログラムは子どもの栄養摂取や健康改善を目指し、全国の一部の地域・学校で国連世界食糧計画(WFP)と地方自治体が協力して実施しています。この給食の食材を学校に卸す業者を決める入札で、両組合は5校との契約を落札して、今後一年間、大量の農産物 (米、肉、野菜など)を卸販売できることになりました。作物の販売先が限られるこの地域において、学校給食は大きな販路となります。
入札では、価格だけでなく食材の品質も評価されました。今回落札された組合のお米は、その色や香り、形などが良いと評価されました。
今回の卸契約で、両組合は月に約100ドルの収入を期待できます。今までは、組合収益がわずかの月や全くない月もありました。安定した収入は、安定した組合運営にもつながります。組合員は「わずかでも安定した収入が続けば、組合が地元からの信頼を得て、加入農家も増えます」と言います。
組合員たちは、笑顔でこのように話していました。
「子どもたちに、地元の私たちが作った野菜や肉を食べて健康に育ってほしい。外国からの輸入など、よそから買ってきた食材ではなく、このコンポンチュナンの大地で作られた食材です。そのためにも、ぜひ落札したいと願って入札に参加しました。」
「競争入札は初めての経験で緊張しましたが、勝ち取ることができました!」
「FIDRが一緒に私たち組合に寄り添ってくれたおかげで、農業をビジネスとして運営でき、若い世代が健康に成長するお手伝いができると感じています。」
FIDRは、今回の入札に当たり、入札書類の作成や価格設定の助言など、準備段階から両組合を傍から支えてきました。それでも、契約を勝ち取ったのは組合の運営メンバー自身による力で、彼らの成長の証です。今回の経験を糧に、組合がさらに自信を持って入札から食材提供まで自分たちの力で円滑に進めていけるよう、支えてまいります。
(写真)入札で食材について説明する農民組合員