住民の医療のよりどころ、保健ポスト(診療所)に医療器具を届けました② ―「同じ目線で、共に歩む」FIDRと現地の関係性―
供与された医療器具を手にする保健ポスト(診療所)職員たちと杉田所長(後列中央)
ネパール事務所長 杉田真央
FIDRは、当プロジェクト地にある全14か所の保健ポスト(診療所)への医療器具の配備を進めています。昨年度8か所へ配備したのに続き、8月上旬には残りの6か所へ医療器具一式を届けました。
地域住民の健康状態を良好に保つためには、住民一人ひとりが正しい知識を持ち、それを日々の生活において実践することはもちろん、住民たちのよりどころである保健ポストにおいて質の高いサービスが提供されることが重要です。保健ポストでは診療に必要な器具が不足し、提供できるサービスに限りがあったため、必要とされる器具を配備することとしました。
各保健ポストにおける供与セレモニーでは、保健ポスト長(通常、区長が兼任)、保健ポスト運営委員長及び委員、保健ポスト主担当官、保健ポスト職員たちが集まり、FIDRの代表者として私も参加しました。多くの関係者から「このような遠隔地域に医療器具を届けてくれたことに感謝します」という謝意が聞かれました。
「物資を供与する」という支援は、実はとても難しいものです。細心の注意を払わなければ、供与する側とされる側、という上下関係をいとも簡単に生み出してしまいます。
しかし、持続的なコミュニティの発展を目指す地域総合開発においてはとりわけ、地域行政関係者、地域住民、FIDRは、対等な関係性であることが重要です。同じゴールに向けて同じ目線でともに歩む関係であり、FIDRは、決して上から命令・指示する立場にはありません。
そのため、供与セレモニーでは、「コミュニティの保健を向上させるため、今後も共に頑張っていきましょう」という言葉を交わし合うことを意識しました。
各所での地域行政関係者のスピーチからも、彼らがFIDRを「持続的なコミュニティの発展を共に目指す、対等なパートナー」と考えてくれていることが感じられました。
例えばある保健ポストでは、保健ポストを統括する村(日本の”市”にあたる)の保健担当官より、感謝の言葉とともに、「我々も区もFIDRも、持続的なコミュニティの発展という同じゴールを目指しています。ドラマのワンシーンのようにただ今日という日を喜ぶのではなく、これらの器具をどのように活かすか、この保健ポストを訪れた患者たちが満足するようなサービスをいかに提供するか、を考えることが大事です。私は村の保健担当官としてこれからも区とFIDRと協力し、地域の保健の向上を目指していきます。」という頼もしい決意思表明がありました。
また別の区長兼保健ポスト長は、「私たちからのリクエストをもとに、FIDRが多大な努力をしてこれら器具一式をこのような遠隔地にある保健ポストへ届けてくれたことに、心より感謝します。次は私たちの番です。器具がここ保健ポストにただ届いても、これらが地域住民に保健サービスとして届かなければ意味がありません。これらの器具を地域住民のために正しく活用すること、それが私たちの責任です。区長兼保健ポスト長として、これらの器具が正しく活用されることをここに約束します。」とスピーチしてくれました。
また、セレモニー後の会話でも「私も、あなたたちも、もとい”我々”は、地域住民のために働いているのだから、そのためにこれからも協力していきましょう」とFIDR職員に声をかけてくれました。
供与した医療器具一式が地域住民の健康のために役立てられるよう、FIDRは今後も、保健担当の地域行政関係者たちとともにフォローアップしていきます。
※今回の保健ポスト6か所に対する医療器具一式の供与は、外務省の令和4年度日本NGO連携無償資金で行われました。
今回供与した医療器具の品目一覧