「栄養に配慮した農業」を推進しています
自家栽培に適した野菜を住民に紹介するFIDRスタッフ(左)
かつてベトナム戦争のさなかには激戦地となったコントゥム省。今はおだやかな景観が広がり、コーヒーやゴム、キャッサバといった商品作物のプランテーション栽培が盛んです。そこに多くの地元住民が労働者として雇われています。
日々農作業に従事しているものの、彼らの食事には野菜類が不足しています。賃労働で得られるわずかな収入では食材として野菜を購入するのは容易ではない、商品作物の栽培に従事するため各家庭での野菜栽培の経験が乏しい、粗放的な農法のため収量が少ない、集約農業による多種目の野菜を栽培する技術がない、などが要因です。
ここはまた、バナー族、セダン族といった少数民族が多く、ベトナムの主流民族であるキン族とは言語や文化が異なるために、農業や食料に関する情報の流通、技術の普及が進みにくいという事情もあります。
さらに、コントゥム省はベトナム国内でも特に交通の便が悪い土地であることに加え、政治的理由から外国の援助機関の関与を厳しく制限されてきた経緯があり、ここで暮らす少数民族の生活向上につながる能力向上が他の地域に比べて遅れています。このため住民の5割ほどが、今なお貧困状態から抜け出ることができずにいます。
こうした状況を踏まえて、FIDRでは近年、国際的に支持を広げている「栄養に配慮した農業(Nutrition Sensitive Agriculture)」のアプローチを重視し、住民が家庭菜園で多種目の作物を栽培し、自家消費するとともに、販売することで現金収入を増やし、自家栽培しない野菜や肉類・魚介類の購入も促進することを目指しています。
コントゥム省におけるベトナム中部生活改善と子どもの栄養改善プロジェクトでは、キッチンカーによる調理実習で炊き込みご飯などの栄養バランスを考慮した食事の普及を行っています。その材料の栽培から栄養に配慮することで、効果は一層高まるはずです。
今なお、コントゥム省は政治的に注意を要する地域(Politically Sensitive Area)であり、プロジェクトで予定している活動が思うように進まないこともありますが、FIDRベトナム事務所では、この取り組みが着実に実を結ぶようスタッフが力を合わせています。
家庭菜園風景