日本の小学校・中学校視察から学んだこと
グン・ビル・ネワール
地元の木材がふんだんに使用された校内を視察。右からシバジ職員、ガネシュ職員、杉田所長、筆者。
10月、初めて日本に出張し、関東周辺の各所を視察しました。その一つが、長野県佐久穂町の佐久穂小学校・中学校です。
佐久穂小学校・中学校は、4つの小学校と2つの中学校が統合され2015年に創立された小中一貫校です。視察当日は、長野県佐久穂町教育委員会の渡邉委員長と同委員会のこども課学校教育係の内藤さんが学校の設立経緯や運営の特色などについて説明してくださいました。また、私たちは、校内の教室、図書室、理科室、音楽室、コンピュータールーム、家庭科室、体育館、運動場などを見学しました。
校内の見学は、最も印象深い経験でした。
驚いたのは、学校の教室に使用されている木材が、すべて地元産であることです。どの教室もとても綺麗で、学習や実習に必要な教材が十分に揃っていました。教室内もとても明るくて広く、学習机と椅子は、子どもたちの学年に応じたサイズのものが配置されていました。
とても綺麗で明るい教室。子どもの年齢にあったサイズの机、椅子が設けられていた。
子どもたちの特性にあわせ、学習用の個別ブースも設けられていた。
靴、スリッパ、傘、洋服、バッグなどは、木製の戸棚にきちんと整理整頓されていました。
階段は、子どもたちの安全のために十分なスペースを擁する大きなものでした。大きなグラウンドやプールもありました。大きな図書館には、低学年・中学年・高学年別で本が並べられていました。各特別教室や体育館も、小学校・中学校ごとに設置・管理され、十分な設備が整っていました。教室に行くのをためらう子や体調を崩してしまう子のために、学校には個別の部屋やベッドのある保健室もありました。
ネパールでは、このような様々な目的に応じて整備され、よく管理・運営された学校は見たことがなかったので、とても驚きました。
図書館。低学年用、中学年用、高学年用など対象別に図書が配置されていた。
子どもたちの持参物。自分たちで整理整頓していた。
教育への取り組みも、大きな学びでした。
まず、小中一貫教育についてとても感銘を受けました。例えば、学校外の時間も含めて、上級生が下級生を積極的にケアするよう促していること。そして、上級生が下級生のお手本となれるよう、自分たちの行動を変えていっていること。また、子どもたちが交流し学び合うことで、一人ひとりが自らの行動を振り返り、他者への思いやりを持ち、そこから助け合う関係性を醸成すること。9年間一貫して、このような方針で教育がなされていました。
当校では、外部から講師を招くなどの取り組みも行われ、子どもたちは積極的に授業に参加していました。
保護者や地域の人たちは、学校の活動にとても協力的だそうです。保護者の方々は、子どもたちの授業参観に積極的に参加していました。
私は、学校の先生、保護者、地域の人々が、実践的な教育を通して、日々の生活から子どもたちのポジティブな成長を後押ししていると感じました。
今回の学校視察を通じて、私は「生徒中心の学習環境」という言葉の意図するところを知りました。
ネパールでは、十分な設備も、教室数も、教室の備品や教材もありません。図書館のある学校は限られており、あったとしても学年ごとに本が並んでいることはほぼないでしょう。教科外の活動もさほど行われていません。当校のように、充分な設備が整えられ、さらに細部まで考え抜かれて初めて、「生徒中心の学習環境」になるのだと理解しました。
私は今後、当プロジェクトの学校でも、学校運営委員会やPTA、先生や子どもたちを、次のような点で後押ししていけたらと考えています。
まずは、地元の木材などの資源を学校の備品や設備づくりに活用すること。そして、学校の改善計画づくりをサポートし、より良い学習環境の整備に努めること。さらに、子どもたちが「ただ教科書や黒板に書かれていることを読むだけの教育」ではなく、教材や学習機会の充実、学校関係者の協力体制の充実により「実践的な教育」を受けることができるよう、地方行政機関や学校関係者らと連携していくことです。