保健ポスト職員を対象とした研修を開催しました
ネパールの国民の健康にかかわる三大課題には、感染症、災害(自然災害、事故、暴力、怪我、気候変動の影響など)とともに、「非感染性疾患」があります。2018年の統計では国の死亡原因の66%を非感染性疾患が占めているという結果が示されました。
世界保健機関(WHO)は非感染性疾患を、「不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒、大気汚染などにより引き起こされる、がん・糖尿病・循環器疾患・呼吸器疾患・メンタルヘルスをはじめとする慢性疾患をまとめて総称したもの」と定義しています。
非感染性疾患は、人々の生活習慣により引き起こされるものが多いため、本来は日々の暮らしの中での取り組みが最も効果的。ネパール政府は国としての取り組みを強化しているところではありますが、FIDRの事業地のような山村にはその施策はなかなか及びません。
人々にとって保健ポストは一番身近な医療機関です。その職員たちは健康に関する幅広い知識と診断能力を備えていることが期待されます。しかし、現職の保健ポスト職員が学ぶ機会はほとんどありません。先般の新型コロナウイルスのパンデミックのような事態であれば、感染予防や治療に関する情報が得られますが、非感染性疾患となるときわめて限定的な知識しかありません。
そこで、FIDRのネパール地域総合開発プロジェクトでは、7月30日から8月2日にかけて、事業対象地の村保健担当官4名及び保健ポスト14か所の職員25名の計29名を対象に、非感染性疾患をテーマとした研修を開催しました。
今回の研修では、非感染性疾患を専門とする医師2名を講師に迎え、喫煙や飲酒の影響、糖尿病、高血圧、精神疾患など幅広い領域を扱い、その要因となりうる生活習慣、患者へのカウンセリング、早期発見・診断方法、フォローアップの方法などについて詳しく学びました。
その中で、肥満の防止としてダンスが紹介され、受講者全員が楽しそうに踊る一幕もありました。ジムもない、ランニングに適した平坦な道もない、筋トレ習慣もない、でもダンスならどこでもできる、というネパールならではの工夫のようです。
また、昨年FIDRが各保健ポストに配備した自動血圧計や血糖値測定器、身長計や体重計などを用いた実践的な研修としたため、すぐに患者の診療に活かすことが見込まれます。
彼らがコミュニティにおける保健活動のかなめとして活躍し、子どもから高齢者まで健康が守られることを期待しています。