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「ふりかけ」から始まる村づくり   —たくさんの思いを「ツナグ」プロジェクトの始動—

カンボジアのコンポンチュナン州では、州内でも特に貧困率が高い郡の3つの地区で、コンポンレーン郡農村開発プロジェクトを実施しています。3地区の住民が安心して生活できるよう、十分な生計手段を確立し、衛生環境や教育事情を改善することが目標です。

このプロジェクトでは、2007年から2023年にかけて州内の別の地域で行ってきた農村開発の経験を活かすとともに、FIDRの法人賛助会員であるニッシントーア・岩尾株式会社様(以下、NTI社)との協働で新しいチャレンジを始めました。それは、地元で捕れる川魚を活用した「ふりかけ」の普及です。各家庭で作られたふりかけが売れることで副収入になり、栄養豊富なふりかけを美味しく食べて大人も子どもも健康になる。そのような想いを込めながら、人と人をつなぐこのふりかけ生産の取り組みを、私たちは「ツナグ」プロジェクトと呼んでいます。

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ふりかけご飯を初めて食べる小学生たち

●なぜ、日本のふりかけ?

カンボジアでは、子どもたちの多くが食事代わりにお菓子を食べてお腹を満たしているため、栄養が偏りがちです。それに加えて、貧困率が高いコンポンチュナン州では、栄養不良の子どもの割合が国内でも高い状態です。さらに特に生活が困難なコンポンレーン郡では、食卓に並ぶ食材の種類や量も限られており、多くの家庭では十分に栄養のある食事を取れていません。

コンポンレーン郡はトンレサップ川に面しており、漁業は主要な産業のひとつです。川魚を燻して、串に刺して売られている光景がよく見られます。また、すり鉢を用いて食材を押し潰して柔らかくしたり、魚の白身をすり潰してペースト状にする調理方法がもともと定着しています。

コンポンレーンのために何ができるのか。

生活に根ざしたものからヒントを得て、私たちが注目したものこそ、日本の食文化でもある「ふりかけ」でした。

ふりかけは、豊富なタンパク質やカルシウムを含む栄養価が高い食品で、米飯文化のカンボジアでは毎日の食事に取り入れることができます。ふりかけをご飯にかけるという食文化はありませんが、加工した魚粉を調味料としてスープに入れる食文化はあります。地元の市場で手に入る調味料やゴマ、コンポンレーンならではの豊富な魚、自家栽培の野菜など、身近な食材でふりかけを作れれば受け入れやすいのでは、と考えました。

  • ●「ツナグ」プロジェクト、始動!

始まりは2023年。

FIDRがコンポンレーン郡での事業計画を詰めていた頃、東京のNTI社から担当2名が初めて現地を訪れました。その後も協議を重ねて、数多のアイディアの中から、ふりかけに的を絞った「ツナグ」プロジェクトが立ち上がりました。

まずは、「ふりかけを知ってもらう」からスタート。

カンボジアで淡水魚の養殖とふりかけの製造販売を手掛けている現地日系企業(Cambodia Fresh Farm/国際ふりかけ協議会カンボジア支部)から助言と調理指導を得ながら、各地で試食会を地元行政と一緒に開催しました。未知の食べ物が受け入れられるのか不安でしたが、村長さんはじめ、集まった皆さんからは「おいしい!」と好反応が返ってきて、ひと安心でした。

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試食会でふりかけを配るNTI社員に、興味津々の子どもが集まる

試食会の次は、「食べたい、作りたい」のステップです。

作り方を実演する調理教室では、ふりかけに多く含まれるカルシウムとはなにか、どんな効能があるのか、をレシピとセットで伝えます。地元の多くの方が参加し、味の良さに加えて、作って売れれば家計の副収入にもなることにも注目が集まりました。調理教室は2年目となった今も村々で続けています。

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青空調理教室。カルシウムの解説含めて2時間ほど

さらに需要を高めるべく、「幅広く買ってもらえる」ために販路の拡大を続けています。地産地消で持続的な生産・販売を目指して、地元の食堂に協力をいただき、コンポンレーン産ふりかけ第一弾の店頭販売が今年10月から始まりました。また、国際機関の支援によって給食が提供されている学校でも、試験的に食べてもらいました。まだまだ作り手も買い手も限られていますが、ひとりひとりの「おいしい」が輪になり地域に広がるための足がかりがようやくできたところです。

  • ●日本企業と進める国際協力

「ツナグ」プロジェクトは、法人賛助会員であるNTI社のご支援によるものです。資金面のみならず、社員の発想力と熱意が国際協力の現場に直接反映され、FIDRと二人三脚で活動が進められている、私たちにとっても新しい形のコラボです。

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FIDR現地職員とNTI社員

NTI社・担当社員のコメント

「ふりかけ作りはこれからも深化を続けます!ホップ・ステップ・ジャンプの3段階でいうと、今は「ホップ」の段階が終わったところ。地元の皆さんにふりかけを知ってもらう、食べてもらう、作ってもらう、レシピを考えてもらう、などの働きかけだけではありません。小さなチャレンジを大きなうねりへ変えて行くために、私たち商社の知見を活かしながら、販路の拡大やブランディングなど、もっと多くの方々に地元産ふりかけを知ってもらうためにできることは沢山あります。色々な人々を『ツナグ』ことで、こうした課題を乗り越えていきたいですね!」

●「ふりかけ」が作る未来

ふりかけを「作る/売る」ことで、安定的な収入や増加に繋がり、また「食べる」ことで、子どもたちの健康の増進にも寄与します。さらに長い目で見ると、ふりかけ生産者同士がお互いに繋がり合える楽しい村づくりや、自分の力でこんなオリジナルふりかけができた!という成功体験で自信をつけるなど、ふりかけ作りがコミュニティの自立発展を助ける<仕掛け>としても役立つことを期待しています。

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