ゴミ拾いから始まる衛生環境の向上
カンボジアのコンポンチュナン州コンポンレーン郡では、貧困率が高い3つの地区で住民が安心して暮らせる村づくりを目指すプロジェクトが進行中です。
3つの地区では、ゴミが散乱する不衛生な状態であることが大きな課題の1つです。
特に、雨季に地域一帯が冠水する地区では、辺り一面の水位が上昇して地面がなくなるため、住民はゴミを水面に投げ込んで片付けます。乾季になり水が引くと、プカプカ浮かんでいたゴミが地表に取り残され、そのまま放置されて乾燥してやがて地表の一部になる・・・というサイクルを毎年繰り返しています。「散らばったゴミを拾って片付けても、どうせ来年またゴミだらけになる」と最初から諦めを抱く住民も少なくなく、ゴミが放置されがちな状況は、村の衛生環境や人々の健康に悪影響を及ぼしています
雨季(左)と乾季(右)の違い。雨季の間に捨てられたゴミが乾季にはあらわになる。
衛生環境が整わなければ、健康は守れません。何かを変えたいならばまずは自分たちで手を動かそう!と、FIDRは学校や行政にその意義を伝え、学校の生徒や住民とともにゴミ拾い運動を進めました。各村で初めての試みでしたが、村をキレイにしたいという気持ちはみんな一緒。多くの人たちが快く参加してくれました。集めたゴミを誇らしげに掲げて写真に写る子どもたち。カンボジアでは、「きれいな住まい、きれいな飲み水、きれいな食べ物」という政府が推奨する衛生スローガンがあり、ゴミ拾いはまさにそれを実践に移したものなので、この取り組みは大変喜ばれました。
その効果はじわじわと広まっています。「キレイにすることは楽しい!」という満足を実感できたことで、ある住民は我が家の前に公衆ゴミ箱として、大きな麻袋を設置しました。自分の家だけでなく、村全体がキレイになってほしい、との願いからです。誰かのために行動を起こす、その輪が広がる。FIDRが長年大事にしてきた、住民が主役になる持続的なコミュニティ作りのアプローチが、ここコンポンレーン郡という新しい事業地でも根付いた瞬間でした。
子どもたちから大人まで多くの人たちがゴミ拾いに参加
村の中を衛生の啓発メッセージを拡声器で伝えて回ります
住民が麻袋で作った公衆ゴミ箱