ネパール山岳地域で、子どもたちに音楽教育と主体的な学びを
手拍子でリズムを刻む練習をする教員たち
当プロジェクトでは12月、支援地の小学校18校の教員計54名を対象に「音楽科目」と「子ども中心の教育アプローチ」に関する6日間の教員研修を開催しました。
地域行政及び校長らからの要請をもとに企画したもので、FIDRはそれぞれの領域を専門とする講師2名及び講師補佐1名を連れ、首都カトマンズから事業地へ赴きました。
なぜこうした要請があったのでしょうか。
ネパールでは、約10年前に音楽が必修科目となったにも関わらず、特に山岳地域にある学校ではほとんど音楽の授業は行われていません。教員たち自身が子どもの頃に音楽の授業を受けた経験がない上に、教員として音楽科目の指導方法を習得する機会もないためです。
そこで今回は、音楽科目の基礎知識といえる音色やリズム、速度、和音の響き、拍などについて、座学と実践を繰り返しながら学びました。はじめは全員で歌を唄うもリズムや音程がずれていましたが、研修後半になると会場から綺麗なハーモニーが聴こえてくるようになりました。
夕食後に楽器(ハルモニウム)の自主練習に励む
もう一つ強く要請されたのは、一人ひとりの子どもたちの力を最大限に発揮することを目指した、子ども中心の教育アプローチ。
ネパールでは先生の板書を生徒が復唱する講義形式が一般的です。また、山岳地域にある学校は、教材・教具も限られています。
そこで教員たちに、“身近にあるものを活用”して、子どもたちの主体的な学びをサポートするような教育アプローチを学んでもらいました。例えば、算数科目の三角形については、校内で三角形を探して図として描いてみる。英語科目でアルファベットを繰り返し練習して欲しいけれど紙が十分にない場合には、紙の中心に大きく袋文字(縁取り文字)のAを書き、その中に小さなAをいくつ書けるか生徒に挑戦させるなどです。
子ども中心の教育アプローチについて、実践を通じて学ぶ。天井や壁に掲示されているのは、研修時に作成した学習ツール。
研修は、連日朝早くからだったにも関わらず、教員たちは夕食後にも再び会場に集まって楽器に触れたり、その日学んだリズムに合わせたステップの復習を行うなど、初めて学ぶ内容に多少戸惑いながらも、“学びたい”という向上心に溢れていました。
研修終了後、教員たちは早速学校に戻って、得た学びを実践し始めています。授業の充実化により、子どもたちがより広く深く学ぶ経験を重ねることで、彼らの未来の可能性が広がることを期待しています。