カンボジアでのインターンを終えて
8月、中川はるなさん(東京大学二年生)が、FIDRカンボジア事務所でインターンをされました。感想をご紹介します。
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この夏、AIESECという学生団体のインターンシップでカンボジアを訪れ、その一環で、5日間、FIDRの農村開発プロジェクトに関わりました。FIDRがコンポンチュナン州の村で行う活動を毎日見学し、13人の村人へのインタビューを実施しました。
このインターンシップでの目標の1つは、発展途上国と称される国の農村部に住む人々は何を求めているのか、数値では測ることができない実態を探ることでした。
インタビューでは、FIDRの活動に参加された母親たちに、?今日の活動に参加できてハッピーか、それはなぜか、?ここ一年で一番嬉しかったことは何か、?ここ一年で一番大変だったことは何か、の3つを聞いて回りました。すると、数値では測ることができないニーズとともにFIDRがどのように農村を開発しているのかが見えてきました。
まず、活動に参加し始めたばかりの方にとっての幸せは、「健康であること」と「家族全員で一緒に暮らすこと」の2つに大体集約されるように思えました。読み書きができなかったり学校に通ったことがなかったりする村の方々の暮らしぶりを見聞きすると、衛生状態は悪く、通年で自身や子どもが風邪をひいているのが普通のようでした。また、子どもを養うお金を得るために、多くの父親は首都へ出稼ぎに行って年に二回帰ってくるだけだそうです。
一方、活動に長く参加し、健康を保ち、かつ生産性の高い農法で収入を得ることができているモデルファミリー(村のキーパーソン)の話を聞くと、また幸せの定義が違ってきます。例えば、自分たちが持っている知識を他人に教える喜び、そういった研修のために村人が自分の家に集まってくれることの喜び、研修がうまくいかなかったとき知識を疑われる辛さなどを話してくれました。
これらの話を聞いて、貧困問題が解決されていくプロセスがはっきり見えてきました。
まず、村のキーパーソンが「健康と収入を向上させて家族全員で暮らす」という希望を、自らの力で叶えます。すると、キーパーソンは次の段階として、自分の知識や経験を他の村人のために役立て、村人に認められることに喜びや幸せを感じるようになります。FIDRのサポートにより活性化されてきたコミュニティでは、他の村人たちも、キーパーソンから学んでいくことで、健康と収入を向上させるという希望を少しずつ叶えていくのです。
そして何より感銘を受けたのは、FIDRの活動を運営し、より良くなるよう試行錯誤を重ねているのがカンボジア人であり、研修の講師が同じ村の住人であることが、持続性と確実な効果を生んでいるということです。
また、今回は、FIDRの栄養教育普及プロジェクトにも関わらせていただきました。
プノンペンにいる4週間はインターナショナルスクールで英語を教えていたのですが、そこでは週に一回30分の、簡単な衛生に関する授業がありました。この衛生授業の時間を利用して、FIDRがカンボジア政府と作成したフードピラミッドのポスターを活用し、全3回にわたって栄養教育を行いました。
子どもたちは休み時間や登下校の際にたくさんお菓子を食べており、砂糖などを大量に摂取しています。今回の3回の授業ではそこにフォーカスを当て、1回目に三色食品群の話、2回目からポスターを使って食品がさらに六つのグループに分けられて、それぞれ摂取すべき適切な量が違うことを説明しました。子どもたちはポスターに興味を持ち、休み時間に見てくれていました。そして3回目には、いかに子どもたちが普段砂糖を摂取しすぎているのか説明しました。具体的には、いつも子どもたちが休み時間に飲んでいる飲料水に含まれている砂糖の量と、1日に摂取すべき砂糖の量をクイズ形式で覚えてもらい、肥満や病気を防ぐには今のお菓子の摂取量を変えた方がより良いと説明しました。
すると、子どもたちの意識に変化があったようで、カンボジア人の教師から授業の後で聞いたのですが、少し太っている生徒が「自分がなぜ太っているのかがわかったから、今度からその飲料水の摂取量を制限する」と言ってくれたようです。
3日間で合計たった90分しか栄養教育ができなかったのですが、子どもたちに影響を少しでも与えられたように思います。